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双眼鏡のカタログの「見掛視界」には、古い式と現行式が混ざっている
ライブ用に双眼鏡を探していると、スペック表に「見掛視界」という欄が出てくる。覗いたときにどれくらい広く感じるかを角度で示した数字で、大きいほど視界が広い、と説明されることが多い。
ところが、この欄の数字を機種同士で並べて比べると、順番がおかしくなることがある。原因は、双眼鏡の性能ではなく、この欄の出し方が一つに決まっていないところにある。カタログに載っている見掛視界には、実視界に倍率を掛けただけの古い式で出した値と、現行の国際規格に沿った式で出した値が、いまも混ざっている。
見掛視界の数字だけで比べると、順番がひっくり返ることがある
収録している機種から、同じ倍率のものを二台並べてみる。
- Canon の 10×20 IS は、カタログの見掛視界が 49.5°
- OM SYSTEM の 10×21 DPC I は、カタログの見掛視界が 50°
見掛視界の欄だけを見れば、後者のほうがわずかに広い。ところが実視界を見ると、前者が 5.3°、後者が 5°。実際に切り取れる景色の幅は、前者のほうが広い。
ステージの端から端までがフレームに入るか、隣の席の人まで映り込むかを決めているのは実視界のほうだ。見掛視界の欄だけで選ぶと、この二台は逆に見える。
実視界に倍率を掛けた数が、そのまま見掛視界として載っている機種
古い式のほうは、実視界に倍率を掛けた数をそのまま見掛視界として書く。収録機種の中から、その形になっているものを挙げる。
- OM SYSTEM 8×21 DPC I ... 実視界 6.4°、見掛視界 51.2°
- OM SYSTEM 10×21 DPC I ... 実視界 5°、見掛視界 50°
- Vixen アスコット ZR7×50WP ... 実視界 6.4°、見掛視界 44.8°
- Sirius シリウス12 ... 実視界 4.8°、見掛視界 57.6°
どれも、実視界の値に倍率を掛けた数が、そのまま見掛視界の欄に入っている。掛け算だけで出せるぶん簡単だが、倍率が上がるほど、実際に感じる広さより大きい数字が出る。同じ 6.4° の実視界でも、アスコット ZR7×50WP と 8×21 DPC I とで見掛視界の欄がずれているのは、倍率が違うからにすぎない。
実視界が同じでも、見掛視界の欄はここまで離れる
現行の式は、レンズを通して視野の端を見たときの実際の角度に近づけるよう補正が入るので、同じ機種でも古い式より小さい値になる。
- Vixen アテラⅡ H10×21 ... 実視界 4.8°、見掛視界 45.5°
- Vixen アトレックⅡ HR8×25WP ... 実視界 7.5°、見掛視界 55.3°
- Vixen コールマン HR Lite 10×25WP ... 実視界 5.5°、見掛視界 51.3°
ここで、上のシリウス12 と並べてみてほしい。シリウス12 の実視界は 4.8°、アテラⅡ H10×21 の実視界も 4.8° で、切り取れる景色の幅は同じだ。それでもカタログの見掛視界は 57.6° と 45.5° に分かれる。この開きは、レンズの広さの差ではなく、書き方の差でできている。
見掛視界の欄が古い式かどうかを見分ける
手がかりになるのは、実視界に倍率を掛けた数と、カタログの見掛視界の欄を突き合わせることだ。二つがぴったり一致していれば、その欄は古い式で出ている。収録機種のうち見掛視界を公表しているものを全部当たっても、現行の式で書かれている側に、この掛け算とぴったり一致するものは無かった。
ただし、逆は言えない。掛けた数より小さいからといって現行の式とは限らない。メーカーが表示のときに数字を丸めていれば、古い式で出した値でも掛け算の答えからわずかにずれる。収録機種にも、古い式で書かれているのに掛けた数と一致しない機種が一台ある。公式が実視界を度で載せておらず、別の欄からこちらで換算しているため、その丸めの分だけ合わない。
古い式の値と現行の式の値を、同じカタログに両方載せている機種もある。その場合は、欄ごとに掛け算と突き合わせればどちらがどちらか読める。
収録機種のうち見掛視界を公表しているものでは、古い式のままの機種はごく一部で、多くは現行の式で書かれている。だからこそ、残った少数の古い式の機種だけが、数字の上では不自然に広く見える。
欄の名前が同じでも中身が同じとは限らない、という読み方は見掛視界だけの話ではない。対物レンズの径にも、カタログに書かれた径と、実際に光を通している径をメーカー自身が別に公表している機種があり、そちらも欄をそろえずに並べると比較が狂う。
見掛視界の欄が同じくらいの機種を比べるときは、まず実視界の欄を確認する。実視界が広いほうが、席から見て実際に広く写る。倍率も対物径も同じ表記の機種だけを集めて実視界の欄を並べてみると、型番が同じでも実視界がどこまで散るかが見える。見掛視界の式の違いを抜きにしても、型番だけでは視界の広さは決まらない。
見掛視界より先に、実視界と席までの距離を見る
そもそも、ライブで効いてくるのは見掛視界の絶対値ではない。自分の席からステージまでの距離と、その距離で実視界が何メートル分を切り取るか、そこに推しがどのくらいの大きさで写るか。見掛視界は「覗いたときの窮屈さ」の目安で、何が写るかを決めているわけではない。
倍率と実視界を変えたときに、自分の席から像がどう変わるかは、数字を見比べるより実際に出したほうが早い。ここで挙げたアテラⅡ H10×21 については、東京ドームの二階スタンド正面席から見た像をそのまま画面に出した記事があるので、この実視界が遠い席でどれくらいの範囲を切り取るのかを、数字ではなく像で確かめられる。会場と席を選べば、収録している機種でそのまま切り替えて見比べられる。
出典
- OM SYSTEM 8×21 DPC I(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- OM SYSTEM 10×21 DPC I(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Vixen アスコット ZR7×50WP(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Sirius シリウス12(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Canon 10×20 IS(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Vixen コールマン HR Lite 10×25WP(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Vixen アテラⅡ H10×21(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
- Vixen アトレックⅡ HR8×25WP(メーカー公式仕様、確認: 2026-08)
最終更新: 2026-08-29
